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ニュージーランドで森の生活を送る作家・四角大輔さんに聞く、“軽やかさ”とは

2025.4.8

2025.4.9更新

※弊社から依頼し、いただいたコメントを編集して掲載しています。

パナソニックの家電サブスクサービス「noiful(ノイフル)」は、“軽やかな住まい方”という価値観を大切にしています。引っ越しに伴う家電まわりの手続きや作業の負担を軽減できるといった具体的なメリットはもちろん、モノを持たずとも自分らしく生きる精神的な軽やかさ、ひいてはその輪が広がり一人一人がハツラツと暮らせる社会の実現に向けて、サービスを展開しています。

でも実際、“軽やか”ってどういう状態なのでしょう?
自分が軽やかに日々を送れているかと聞かれたら、どうでしょうか?
そこで、軽やかさを体現していると思う人たちの言葉から、これからの自分らしい生き方や軽やかなくらしのヒントを探していくインタビュー企画「“軽やかさ”を考える」を始めます。

第1回目のゲストは、ニュージーランド湖畔の森で自給自足ライフを送る執筆家・四角大輔さん。かつて敏腕音楽プロデューサーとして10回ものミリオンヒットを記録した四角さんは、キャリアをリセットし、ニュージーランドに移住。心の声に耳を傾け、自分らしいくらしを現在進行形で叶え続けている秘訣に迫ります。


四角大輔/作家
ニュージーランド湖畔の森でサステナブルな暮らしと、場所・時間・お金に縛られない働き方を実践。コミュニティ〈LifestyleDesign.Camp〉主宰。『超ミニマル・ライフ』『超ミニマル主義』『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』など著書多数。‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬



NZ移住のきっかけは、友人からの手紙


子どものころから、自然が大好きだったという四角さん。ニュージーランド移住の計画は、一通の手紙から始まったそう。

「学生時代に、ニュージーランドに留学した親友からの手紙がきっかけでした。同封されていた写真には、青い湖と、美しく巨大なマスが写っていて。僕は子どもの頃から釣りが大好きで、水辺にいるときがもっとも自分を取り戻せる時間でした。なかでも雄大な湖は特別な場所で、だから写真を見た瞬間、行ったこともないのに、絶対ニュージーランドに移住するって決めたんです。その日から、その夢を叶えることを人生の最優先事項にしました

移住を見据え忙しく働く日々も、徹底した時間術と集中力で誰よりも休みを確保しては、湖で過ごした。何度か引っ越しを重ねたが、家探しの条件で外せなかったのは、家から1時間以内で湖に行けるかどうか。

「病弱でいじめられっ子だった小学生低学年のころ、生き辛さから楽になるために…と『いま生きていて、一番感動することは何か』と自分に問いかけるようになった。当時、夢中だった野球と釣りにおける感動の瞬間を増やせば、苦しい毎日が少し楽になるかもしれないと考え、感動の回数を増やす努力をするように。
会社員時代、この問いへの答えはフライフィッシングでした。美しい湖で大きなマスがかかった瞬間の感動が、生きることのモチベーションとなり、好きが高じてフライフィッシングが副業になったんですよ」


レコード会社に勤め15年が経ったころ。念願の永住権を取得でき、スーツケースとバックパック、極太の釣り竿ケースだけを持ち、ニュージーランドに渡った。

「周囲から『なぜ絶頂期にキャリアを手放す?もったいない』と言われましたが、なんの迷いもなかった。地位や名声のために働いたのではなく、愛するアーティストと音楽を世に届けたいと夢中になった結果、ヒットメーカーと呼ばれるようになり、地位や名声がたまたま僕の元に巡ってきただけ。それを手放すことで身軽になり、やっと本来の自分を取り戻せた。ここから本当の人生が始まる、そんな感覚でした
ヒットが続き、収入が増え続けても「学生時代+α」という生活レベルは上げず、車はボロボロのバンを乗り続け、部屋は古着と中古の家具・家電のみ。いざとなれば、あの無料のキャンプ場で釣りをして暮らせば、収入ゼロでも死ぬことはないと(笑)。ライフコストをミニマムにして、金銭的にも物理的にも身軽でいたからこそ、躊躇なく移住の決断ができたのです」

仕事は稼ぐためでなく、楽しいからやる


移住後は、念願だったマス釣りに没頭し、敷地を畑や果樹園にして自給自足のくらしがスタート。

「ニュージーランド移住後の半年間は、実際に湖畔でキャンプ生活をしていました。仕事は自給自足のバックアップだと考え、フライフィッシングの道具や登山ウエアのテスターと、アウトドア系雑誌への寄稿だけに絞りました。『衣食住』を確保することで、稼ぐことを目的にせず好きな仕事だけする、というミニマル主義が僕の哲学なので、収入は1/10になったけど余裕です。辺境の湖畔に古い家を買って『住』を確保し、『衣』は、世の中に有り余っている安価な古着と、契約していたアウトドアブランドから提供いただく最低限の服でまかなう。『食』は自分で釣った魚や庭で育てる作物がある。ちなみに、家を自作しようと試みたのですがあまりに大変で、『住』だけは自給を断念しました(笑)」

湖を眺めながら、自分で釣り、さばいた魚をいただく

その後、ニュージーランドを拠点に移動生活を送ることに。

住む場所を固定してしまうと、発想の自由や創造性の幅を狭めてしまいそうな気がして、移動生活をハイブリッドさせることに。半年はニュージーランドの湖畔に暮らし、残りの半年は世界中を移動しながら働く。その生き方をXで発信していたら、ノマドの先駆けとして注目されるように。ノマドブームに加え、ずっと続けていた登山が大ブームになったこともあり、仕事のオファーが途切れなくなり、いつの間にか会社員時代の最高年収を超えていました。楽しい仕事だけやっていたのに、気づいたら超多忙になっていた。これは違うと思い、心がもっとも望んでいた作家業だけを残し、他のすべての仕事を手放して再リセットしました」

まずは、物理的に身軽でいることから


キャリアをリセットしての移住、そして再リセット。常に“軽やかさ”を保つために、実践していることは?


「まず、物理的に身軽でいることが大切です。最小単位の持ち物である財布とその中身を、1gでも軽くすることから始めましょうと、僕はいつも言います。その小さな積み重ねが、いざという時の軽やかな行動につながるのです。物理的に軽くなって初めて、精神的に軽やかになれる。これが持論です」

noifulは、“not owning is fulfilling”からなる造語。「持たざることは満たされること」を意味する。

「いい言葉ですね。そして素晴らしいサービスですよ。家電を持たないことで、まず物理的に身軽になれます。つまり、引越しがしやすい。そう思えると心は軽くなります。お伝えしたように、一箇所に留まり続けると、発想の自由や創造性の幅が狭まりますから、僕はいつでも引っ越せる状態を維持しています。僕と同じような考えを持っている人には、最適なんじゃないかな。パナソニックのような大手家電メーカーが『持たない豊かさ』を勧めていることが画期的だし、社会を動かすほど大きな意味があると思います」

モノを所有することは、決して豊かなことじゃない


noifulが生まれた背景には、「モノを所有しない」考え方が若い世代を中心に広がっている価値観の変化がある。

「現代の日本社会でモノを所有することが、豊かさや幸福度につながるとは思っていません。むしろモノを足していくことで、身軽さ、自由さが奪われます。一時的に利用するものなら所有しなくても、シェアリングサービスを利用すればいい。そうすることで、環境を破壊して気候さえも狂わせてしまった、大量生産・大量消費のシステムに変革を起こすことができますから」

そんな四角さんがモノを選ぶときに大切にしていることやこだわりは?


「モノ選びの基準は、10分以上、そのモノについて人に語れるかどうか。たとえ、100円のモノだとしてもです。語れるもの、好きなものだけに囲まれていると感性が研ぎ澄まされる。斬新なアイデアも次々と湧いてくるし、本来の自分を取り戻すこともできるんです」

noifulの「自由に選べる家電プラン」は、お料理が好き、美容に関心があるなど、多様なライフスタイルにフィットするよう、お部屋や家電が選べるプランだ。

「家電を揃えるのは大仕事です。比較検討したり、部屋に合うサイズを選んだり、買い替えたりする労力だけでなく、時間とお金もかかる。noifulで、生活するために必要なものがサブスクですべてセットアップできるなら、限りある人生のリソース(労力・時間・お金)を大好きなことに大胆に投資できるようになる。noifulは、人生100年時代において、もっとも合理的だと僕が主張する〝一点突破な生き方〟を後押しする存在になると期待しています」

最後に、四角さんにとって“軽やかさ”とは?


「僕にとっては、いざというときに思い切った挑戦ができること。じつは今年になって、フランスとイギリスの出版社から契約オファーをいただいたんです。だから来年からは半年近くは、ヨーロッパ圏に住んでやろうと即決。残りの人生を、欧米での作家活動に賭けるつもりです。でも、この決断には勇気はいりません。軽やかを維持しているからこそ、50代半ばになっても大胆な発想が湧いてくるし、思い切った決断ができるんだと思います」

インタビューの途中で、「一番感動すること」の順位が変わったと話してくれた四角さん。フライフィッシングが30年以上不動の一位だったが、第一子誕生を経て、子どもの笑顔を引き出すことが一位に。そして二位には、本の読者からの「読んでよかった」という感想がランクインした。

「結局、自分の心が求めることを最大化するために、他を最小化して、楽しいと思うことに一点集中してきたことが、いまにつながっていると実感しています」

文/取材:宮﨑謙士


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